大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)863号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意第一点について。

原判決の確定した本件取引の日時は、昭和二三年二月頃であり、その取引の場所は、山口県下の徳山市であって、その事実は挙示の証拠でこれを(出荷の日は同年二月一九日頃)肯認することができる。されば、原判決が本件取引の価格が不当に高価な価格であることを認定するのに、その取引の場所に関係のない所論広島県知事又は大阪府知事の許可価格を参酌しないで、本件取引前の山口県知事の認可価格及び本件取引の前後における物価庁告示によったのは正当であって、原判決の認定は毫も吾人の経験則に反しない。論旨はそれ故採用できない。

同第二点について。

しかし、物価統制令は、物価の安定を確保し以て社会経済秩序を維持し国民生活の安定を図るを目的とするものであるから(同令一条参照)、その目的を達成する手段の一つである同令第九条の二の規定(不当高価契約等の禁止規定)は、同令第一〇条の規定(暴利契約等の禁止規定)等と同じように、所論同令第九条の規定(統制額の脱法行為禁止規定)とは異って、価格等につき同令第三条所定のごとき統制額あることを前提としないものであることは、同令の目的並びにこれらの規定の明文に照し明白である。されば、これと反対の見解を前提とする本論旨は、既にその前提において採用し難い。

よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例